リアルナウシカ 〜胸にカナブンのブローチを〜
また会社に連れてきてしまった様だ。
てんとう虫である。
通勤時に肩に停まってずっとついてきていた。
よくあの満員電車の中潰れずにいたものだ。
てんとう虫である。
通勤時に肩に停まってずっとついてきていた。
よくあの満員電車の中潰れずにいたものだ。
私は虫に好かれている。
のかどうかはわからないが、
誰よりも虫を引き寄せるフェロモンのようなものが
出ているのではないかと思っている。
すれ違う人たちのギョッとした視線で初めて気付くのだ。
とある昼休み。
近くのベンチスペースへ。
周辺の会社員の憩いの場になっていた。
するとバリバリバリと耳元で音がした。
後ろ髪がサワサワっと何かに触れた気がする。
とても嫌な予感がした。
この感じ、大物かもしれない。
頭をブンブン振って手で確認してみた。
いない様だ。
あぁ気のせいだったのだ。良かった。
その後お弁当を食べてしばらくボーッとしていた。
すると隣にいた大柄の男性がそっと声をかけてきた。
「あのー・・・すみません、肩・・・カマキリ乗ってます。」
頭が真っ白になった。
あのバリバリという音。
そう、あいつが羽ばたく音だったのだ。
しかも肩に乗っている・・・だと?
私はパニックに陥った。
そのもの蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つべし・・
丁度青っぽい服を着ていたため、
突然思いつきの思考で冷静になろうと
自己防衛が働いたが、
カマキリが自分の肩に乗っている状況を
楽しむ事が出来なかった。
ペケ山「とっとってぇぁ●×◎▽△☆♨︎♯○$〜」
(ユパ様、この子私にくださいな)
男性「え?とっとるって・・」
(ああ、構わんが)
ペケ山「はっはやくー▽△☆♨︎♯○$〜」
(カイにクイ!私を覚えてる!?疲れたでしょ?いっぱい走って!)
男性「待って!落ち着いて!」
(不思議な、力だ。)
男性はまさかこんなにパニックになるとは思ってなかったのかも知れない。
錯乱状態の見ず知らずの女から
肩に着いたカマキリを取ってくれと言われた彼は
ハンカチをバックから取り出し、
嫌々カマキリをそーっとつんつんした。
彼もカマキリが苦手だった様である。
頑張ってハンカチを使って嫌々格闘した結果、
「と、取れました・・」
男性は小さい声で呟いた。
その言葉を聞いてハッと我に帰った。
見ず知らずの人にカマキリの存在を教えてくれた上、
苦手だろうにここまで親切に対応してくれた人に対してタメ口で除去命令。
そしてひとり取り乱すという痴態。
周りの人達からの視線も痛い。
非常に気まずいったらない。
「え、へへへ・・大変失礼いたしました。
本当にどうも、ありがとうございました。」
深々御礼を申し上げた。
その後何事も無かったかのように
私たちはそれぞれ思い思いに時を過ごした。
暫くして男性は去っていった。
冷静になってカマキリを肩に乗せた姿を想像してみた。
なんだか少しカッコいいかも知れない。
そのもの青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし
古き言い伝えは誠であった・・!
先程の出来事を忘れたかの様にフッと笑いながら男性がいた隣のベンチをチラリとみた。
するとベンチの隅で青々とした巨大なカマキリがこちらを睨み、ファイティングポーズをしながら体を揺らしていた。
こんなもん肩に乗っけてたのか。
身体中鳥肌がたった。
会社にかえったら
服に見た事がない形の虫がついていた。
新種発見か?
街中で体に虫を付けている女がいたらそれは私、ペケ山かも知れない。
早くジブリパークできないかな〜