東京モッシュ ~9両目の壁~
東京に住んでいると避けては通れない満員電車。
もちろんラッシュ時はすし詰め状態で毎朝会社に出勤しなければならない。
そんな満員電車の中で繰り広げられる戦いに生き残ったものだけが余力を残して軽やかかつ爽やかに会社に到着できるのだ。
東京の住人は手すりも掴まらずグラグラと揺れる車内でスマホを見ながらバランスを取る事ができる。
毎日の事だ。
自然と体幹が良くなっているのだろう。
そんな満員電車の中で繰り広げられる戦いに生き残ったものだけが余力を残して軽やかかつ爽やかに会社に到着できるのだ。
東京の住人は手すりも掴まらずグラグラと揺れる車内でスマホを見ながらバランスを取る事ができる。
毎日の事だ。
自然と体幹が良くなっているのだろう。
忍者の修行で小さい苗を毎日跳び越え、育った苗は大きな木となり、いつの間にか高い木をも跳び越えるようになると言うアレと同じ理屈である。
朝8時。
快速でラッシュ120%の時間帯に乗車せねばならない。
いつも同じ車両でぎゅうぎゅうの車内に飛び込む。
次の駅、またぎゅうぎゅうと前から人が乗り込んでくるのだが、そこで必ずあの人、いや、あの壁にぶち当たる。
9両目に必ず乗っているその人は50歳半ば、
150cm台の周りの男性の中でも一際小柄で色黒、
筋肉質な男性だ。
何人かかっても誰も彼を動かせないのだ。
こんなに小柄なのにだ。
とにかく硬い。
まるで岩だ。
カッチンカッチンである。
小柄なのにとてつもなく大きく感じる。
彼の背後にはあのエアーズロックがみえた気がした。
そしていつもスッと軽く目を閉じている。
彼ほどになると心眼を使うのだろうか。
実はこの電車は彼が念力で動かしているのではないか。
まさか、何も感じてないのだろうか。
何人もの力を微塵も感じてないのか。
であれば凄すぎる。
超人だ。
などとよく分からない事を人と人に挟まれながら考えていた。
彼がその場を動かない理由は私にはわからない。
わからないが、今日もまた9両目で彼は目を閉じそこに立っている。