口の中のおっさん曼荼羅 ~天地創造~
先日、あの厄除け関東三大大師の一つにご祈祷に行った。
お参りをするため、手水舎で手を洗う際、事件は起きた。
そこの手水舎は2人くらいが横並びできるかどうかの大きさだ。
前には年配の男性2人。
柄杓で手を洗う。
その後だ。
前のおっさんたちが2人ともがっつり柄杓に口をつけ口をゆすいだのである。
がっぷり、いっておられますね・・
升酒でものんでる気分にでもなったのだろうか?
後ろに並んだが最後、自分の後ろにも人が並んでいる。
後には引けない。
何度か流水に浸し、
出来るだけ飲み口あたりを外して手を洗い、
手の平に水を受け口をゆすいだ。
うーん
おっさんの口元が頭から離れない。
願い事半分、おっさんの口元半分でお参りをした後、
おみくじを引いたらとんでもない事が書いてあった。
生死 10の内、8、9死す
歴代のおみくじでトップクラスに大辛なお告げである。
しかも生死にまつわる事を
どストレートに書かれたおみくじは
生まれてこのかた初体験だ。
口の中におっさんの口腔菌を噛み締めながら
生死のお告げを手に握りしめ、ご祈祷へ向った。
やはり密教はカッコいい。
カッコいいといったら怒られるかもしれない。が、やはりカッコいい。
祈祷の際の僧侶達のお経の大合唱は
とにかく迫力があり、ドキドキしてしまう。
祈祷中にそんな事を思ってしまったら
バチが当たりそうなのだが・・
祈祷が始まっても生死のお告げと
おっさんの口元の雑念が頭をぐるぐると駆け巡っていた。
太鼓とお経の大合唱が最高潮に達したころ
私は瞑想の向こう側にトリップしていた。
私の口の中でおっさんの菌が広がりながら宇宙になり
生と死のお告げが書かれているおみくじは弾けて粉々になり
それが星となって、新たな生命が生まれて行くという無限ループが繰り返されていた。
なぜかご祈祷終了後、口の中の謎の宇宙と天地創造に
ひとりで勝手に胸を熱くさせていた。
よくわからないが
祈祷中はだいぶ煩悩が荒ぶっていたため、
大師様のご利益は難しいかもしれない。
厄払いに行った私は厄を払えたのか貰ったのか。
複雑な心境のまま本堂を出た。
口の中におっさん曼荼羅を描きながらおみくじを木の枝に結んだ。
今年も健康に過ごせますように。