むし
梅雨の時期のレザーソファはベタベタして気持ちが悪い。
さらにレザーが自分の体温で温たまって、汗が出てさらにベタベタしてを繰り返し、
それでもこのソファでゴロゴロする今日この頃。
梅雨です。
じめじめムシムシ過ごしにくい季節になった。
じめじめムシムシ過ごしにくい季節になった。
ムシ・・
大人になるとなぜこんなに虫が嫌いになるのか。
カタツムリを腕に這わせていたあの頃、
青虫を素手で掴み手のひらで転がしていたあの頃、
ダンゴムシを何匹取れるかを競っていたあの頃。
今思うと神の領域だ。
私の育った地はのどかなところであったため、
田んぼや畑が家の周りを囲んであり、虫と戯れる機会が沢山あった。
幼少の頃、当時にしてもとても古い借家に住んでいた。
玄関の鍵はネジ式だったし、ぼっとん便所(流さないタイプの和式トイレ)だったし、お風呂も直接風呂釜を沸かす様なところだった。
ゴキブリやでっかい蜘蛛、ヤモリ(地元ではカベチョロ)、カマドウマや頭が三角な黒いヒルにナメクジ、ダンゴムシ、ムカデやヤスリなど沢山いて共同生活を送っていた。
ミシン用の糸を巻いている芯に紐を通し、クルクル回すとファンファンと音が出たので、
ヤスリや、ダンゴムシに自作蟲笛(むしぶえ)を鳴らして飛ばし、ナウシカごっこをしたものだ。
腕にカタツムリを這わせ、
「ね、怖くない。怯えていただけなんだよね。」
と仮装テトとウフフ、アハハである。
今思うと鳥肌が止まらない。
しかし私はナウシカにはなれなかった。
なぜなら摂生しすぎたからだ。
「貴方は殺し過ぎる。もう光玉も蟲笛も効かない。」
だって、蜘蛛やゴキブリはほっといたら増えるし、
ヤスリやムカデなんて放って置いたら刺すではないか。
中学校の時、合同給食というものがあった。
2クラスくらいで一緒に給食を食べる。
そこで事件は起きた。
私は味噌汁をすすり、後一口くらい残してふとお椀を見た。
私は味噌汁をすすり、後一口くらい残してふとお椀を見た。
なんか白いのが浮いている。
それは茹であがったダンゴムシだった。
お腹を向けてぷかぷか浮いている。
うわ、やばい。汁は残り少ない。
もう隠すことが出来ない。
…案の定、ばれてしまった。
「ペケ山さんの味噌汁にダンゴムシがはいっとったらしいよ!」
ざわ…ざわ…しながら、
みな、味噌汁を残した。
2クラス分だ。
2クラス分だ。
私はダンゴムシに申し訳無かった。
自分の命を粗末にされた恨み、さぞ深かろう…と。
せめて私が早い内に気がついていれば自分の命が溶け込んだ味噌汁を
せめてみんなに美味しく食べてもらえたものを。
私のお椀に入ったばっかりに…。
「こうなったら、もう誰も止められ無いんじゃ…」
そして給食のおばちゃんごめんなさい。
それからというもの、私は汁物で、ん?これって…?と思っても
無心で食す事にした。
あのダンゴムシと給食のおばちゃんへのせめてもの償いだ。
私の脳裏にはオウムの触覚の中を歩くナウシカの姿が見えた。
「そのもの青き衣を、まといて金色の野に降り立つべし…」大婆さまが泣いていた。
暑くなるとちょっと思考がおかしくなる。
あぁソファがベタベタで気持ちが悪い。